◇第6回 支払繰延の要請や手形ジャンプの要請を受けた場合の対応について◇
第6回は、実際に支払繰延の要請や手形ジャンプの要請を受けた場合の対応についてお話させて頂きます。
■1.支払繰延要請・手形ジャンプ要請への対応
取引先の倒産兆候は、色々な形で経営資源(ヒト・モノ・カネetc)の変化に現れます。支払遅延は、代表的な危険の予兆と前回お話しましたが、恒常的に支払遅延が続く場合は、その後も支払繰延の要請や手形ジャンプの要請が続くことが想定されます。
支払繰延要請・手形ジャンプ要請への対応については、前回お話ししました支払遅延が起きた時の対応と同じですが、注意しなければならないことは「慌てないこと」「冷静に一つ一つ事実を確認すること」です。依頼を受けた時こそ情報を集中的に入手できる一番のチャンスです。「後でもう一度聞こう」ではだめです。後日、社長と再び話しが出来るとは限りません。繰延(手形ジャンプ)の要請が来たかと思うと、あっという間に倒産していくケースも少なくありませんので、「二度と話が聞けないかも知れない」と考えて、木目細かく聴取・交渉することが肝要です。
■2.聴取・確認すべきポイント
聴取・確認すべきポイントとしては、
- 繰延要請金額と期間(いくらをいつまで繰延べしたいのか?)
- 資金不足の総額(当社への繰延要請金額と一致するか?当社のみへの要請か?他社へも要請したのか?その金額はいくらか?その他社はどう対応したのか・・・)
- 資金不足の原因及び性質(一時的なものか恒常的なものか?)
- 金融機関との交渉経緯と金融機関の対応状況
という点があげられます。
要は、「資金繰り実態はどうなのか」「我々が繰延に応じてあげれば何とか生き延びられる状況なのか」を見極めることが大切です。そのためには、やみくもに聞いても整理できませんので、月次ベースの「資金繰り表(実績・予想)」を出させ、その項目毎に確認していきながら、「実態」を見極めていくやり方をお勧めします。
「そんな資金繰り表なんて見せてくれるのか!決算書もなかなか出さないのに・・・」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、今のご時世は、この程度の資料が出せないようだと、銀行との交渉もなかなか埒があかない時代と考えて下さい。我々のところに来る前に、絶対に銀行と交渉しているはずです。銀行と交渉しても難しそうなので(あるいは最終的にお金が出るか分からないので)、こちらに来ているのです。ですから、資金繰り表などの「銀行との交渉で使った資料」を全部出させて、納得いくまで詳細を聞きましょう。「そのような資料は作っていない」というのであれば、「これでは、銀行との交渉も難しく、事態は相当深刻」と判断した方がよいかも知れません。冷静に判断し対応しましょう。
■3.やむを得ず要請に応諾する場合のポイント
やむを得ず要請に応諾するとしても、次の3つのポイントは押さえてください。
- 裸債権は増やさない
相手先の資金繰りが厳しい状況になっているのは間違いないわけですから、今回要請を応諾するにしても、「裸債権は増やさない」ことが鉄則です。つまり、要請額を100%受けず、少しでもいいから払ってもらうように交渉しましょう。応諾する時が、ひょっとしたら最後の回収の(債権ポジションを下げる)チャンスかも知れません。また、今後の取引は、「回収の範囲内で続ける(債権は増やさない)」あるいは「担保取付け・保全策を講じて行う(裸債権を増やさない)」のが原則です。「盗人に追い銭」は禁物です。
- 保全強化
保全強化・防御を固めることも鉄則です。「防御」、即ち「担保」あるいは「保全策」です。「担保」と言っても色々ありますが、BS資産は基本的にすべて「物的担保」として取れます。※担保については次回以降お話します。
- 文書化
契約は口頭でも成立しますし、口頭契約で取引をしている場合も実務では少なくありませんが、後々に問題が起きた時のために、極力、文書で「契約」を残しておくことが大切です。仮に法廷闘争になった場合には「書いたもの」で残っているかが勝負になります。
裁判では、商売慣例も分からない「裁判官」が判断しますので、「それは我々の常識」という説明は通じませんし、「言った・言わなかったの争い」では裁判にはなかなか勝てません。何か起きた場合に備えて、平常時に、契約書と共に、貨物受領証、出荷案内書、検収書、請求書、関連e-mailなどの取引文書に至るまで、極力文書で残しておくことがとても大切です。特に注意をしている相手先との取引では留意しましょう。
繰延する場合には、後日に備えて、まず繰延依頼書をキチンともらい、その後の打合せの内容・回答の内容等も「書いたもの」で残しておきましょう。最終的に繰延に応じる場合にも、「債務承認弁済契約書」「繰延合意書」等、繰延の諸条件について「書いたもの」で残しておくことが大切です。
実務では難しい場合も多いですが、公証人役場で「書いたもの」を作れば、「公正証書」になり、その文章の中に「強制執行認諾条項(債務不履行が起きた場合は直ちに強制執行に入る旨を予め合意しておく文章)」を入れておけば、繰延期日に支払わない場合は裁判によって勝訴判決(債務名義)を取らなくても、すぐに「強制執行」に入れます。ケースによっては活用しましょう。
次回以降は、担保についてご説明します。