バックナンバーとなっておりますが、第1回目より、与信管理の観点から会社法の改正ポイントを分かり易く、ご説明致しております。今回は「第2回 債権保全の観点から見た新会社法の改正ポイント」です。
債権保全手段としては担保を徴求する方法があり、担保の種類としては質権があります。質権の目的(対象)には定期預金や株式があります。今回の改正法における「株券不発行」がこの担保にどのような影響を与えるか考えて見たいと思います。
■1.株式会社の株券不発行の原則
新会社法では株券不発行を原則とし、定款に株券を発行する旨の定めがある株式会社のみが株券を発行しなければなりません。(但し、施行日以前に設立されている株式会社については、定款で株券不発行の定めがない限り、施行日後も発行会社とみなされます)。
一方、質権の設定は、当事者間の合意のみで効力を生じますが、対抗要件としては、当該株式の発行会社の株主名簿に質権者の記載・記録および株券の占有が要件となっていますので、ケースごとに注意点をお話します。
- 株券発行会社以外の株式会社の株式の場合の質権設定
【ポイント】
効力要件:当事者間の合意のみで効力が生じます。
対抗要件:当該株式の発行会社の株主名簿に質権者の記載・記録が必要となります。
- 株券発行会社の株式の場合
【ポイント】
効力要件:当事者間の合意の外に株券の交付により効力を生じます。
対抗要件:当該株式の発行会社の株主名簿に質権者の記載・記録及び継続的占有が必要となります。
- 担保徴求する場合の注意点
質権の目的(対象)が株券発行会社の株式であるか否かで、効力要件及び対抗要件が違いますので、発行会社の商業登記簿謄本を取り付け、確認する必要があります。
■2.譲渡制限株式
株式会社は、異なる内容及び異なる種類の株式を発行できることとなります。
従って、株式の種類ごとに譲渡制限が可能となります。上場企業がその一部を譲渡制限とした場合、各証券取引所での上場廃止基準との関係でどのように扱われるか不明な点が多いのですが、質権を取得する場合は、以下注意をすべきと考えます。
【ポイント】
- 質権で取得する株式が譲渡制限か否かを、商業登記簿謄本で確認する。
- 担保設定時には譲渡制限株式でなかったが、事後的に譲渡制限株式とされる場合も考えられることから、質権設定契約書等で譲渡制限株式となった場合は担保の差し替えに応じる旨の特約条項を追加し締結する必要がある。
■3.株式を譲渡契約に基づき取得する場合
譲渡担保契約の対抗要件が、株券の占有となっていますので、株券発行会社が株券不発行に定款変更する場合に備えて、譲渡担保契約書等で不発行となった場合は担保の差し替えに応じる旨の特約条項を追加する必要があります。