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第10回 緊急(倒産)対応策(2)

◇第10回 緊急(倒産)対応策(2)◇

第10回は、前回に引き続き緊急(倒産)時の対応についてお話させて頂きます。

■3.現場で得た情報による保全策

前回は、緊急時の心構え・初動動作についてお話させて頂きました。今回は、現場で得た情報から、具体的にどのような保全策が取れるのかをお話します。
相手先の社長との面談や工場、倉庫を実際に見ることで、「自社の商品や他社の商品が山積みにされている」、「売掛金が回収されずに残っている」、「社有資産・社長個人資産に無担保資産(担保設定のされていない資産)がある」など、現場で得られる情報はたくさんあると思います。これらの中で、商品の引揚げ等に係る保全策を中心にお話します。


本題に入る前に、以下の2点を留意点としてお話しておきます。

まず一点目は、相手先に与えた「期限の利益」です。「期限の利益」とは「期限(支払期日)の到来までは、債務を履行しなくとも良い」という債務者側の権利です。この期限が到来しているかどうかは、緊急時の保全策を講じる場合には重要な問題となります。
従いまして、緊急時の対応に備えて、日頃から「期限の利益の喪失」と「約定解除権」(ついでにできれば「相殺権」も)は契約書等で確保しておきたいものです。

二点目は、「否認」の問題です。破産等の法的手続がとられた場合、管財人等から、破産直前に緊急的に行った保全措置については、「否認」(倒産直前の抜駆け行為は「債権者平等の原則」に反し許されていません)され、保全行為が否定される場合があります。ついては、緊急的な保全措置においても事前に弁護士等の専門家と協議の上で、慎重に対応する必要があります。

それでは、本題に入ります。
はじめに、「当社が納入した商品が相手先に残っていた場合」のことを考えて見ましょう。
引揚げは直ちに行うべきですが、どのような方法があるでしょうか。

  1. 契約解除(合意解除)による引揚げ
     「納入商品の支払期限が到来しているか・いないか」で対応は分かれます。まず、「支払期限が到来している」場合ですが、契約の解除は相手方の合意を取らなくても可能です。但し、商品の引揚げについては合意を必要とします。
    一方、「支払期限が到来していない」場合ですが、「契約解除をし、商品を引揚げさせて欲しい」と交渉して、相手方の合意を取る必要があります。万一、現場に責任者がおらず、契約解除の合意が取れないような場合は、「せめて商品を預からせてくれないか」と交渉してみましょう。その場合は忘れずに「預り書」を相手先に残しておきましょう。

  2. その他の方法
    その他の方法としては、新たな「買上げ(買上げ後に相殺)」、「代物弁済(他のもので返してもらう)」「譲渡担保」という方法も考えられますが、「買上げ」・「代物弁済」については「価格をどうするか」という問題がありますので、実際には「契約解除」が一番交渉しやすいと思います。

  3. どうしても引揚げることができない場合の措置
    商品を引揚げることに相手先が難色を示す場合は、法的手続(仮差押)をとって、商品が他に持っていかれないように保全策を図る必要があります。直ちに弁護士等の専門家と協議して準備をしましょう。その際は、他に持っていかれたらおしまいですのでスピードが大切です。
    実務的には難しいですが、更に、上記「動産売買先取特権(自社の商品により優先的に弁済を受ける権利)」を法的に行使する(差押・競売して競売代金から回収、若しくは、自分で競落する)ことも一応可能です。
    また、「法定解除」という手もありますが、「支払遅延」が大前提となりますので、支払期日が先の場合は全く使えません。

  4. 他社商品は引揚げられるか?
    他社の商品の引揚げは不可能ではありませんが、その商品を納入した他社(先取特権者)がまだ代金を受領していない場合には、間違いなく後日問題になります。法的手続に入れば、前述の「否認」がなされる可能性も非常に高いので、弁護士等の専門家と相談の上、慎重に検討して対応すべきです。
    尚、他社商品を引揚げる場合は、「契約解除」「先取特権」は使えませんので、「買上(相殺)」「代物弁済」「譲渡担保」のいずれかの形態になります。

  5. 当社が納入した商品を転売された場合
    「動産売買先取特権」の「物上代位」というやり方があります。前述した「動産売買先取特権」は納入した商品が相手方に残っていれば、その商品に対して権利を行使(競売等で優先弁済を受けることが)できたわけですが、その商品が既に第三者に転売されていると商品については追求できません。
    しかし、まだ転売先がその代金を相手方に払っていなければチャンスがあります。その未払の代金債権について差押をして「動産売買先取特権の物上代位」として支払わせることができるのです。
    つまり、もともと、「商品」について我々に先取特権があり、その「商品」が「代金債権」に形を変えただけなので、その「代金債権」に対しても「先取特権」が及ぶというのが「物上代位」の考え方です。
    したがって、あくまで「転売」が対象で、少しでも加工が加わったりして「商品」自体の形・性質が変わったりすると対象となりません。また、差押等法的手続をしなければなりませんが、その手続(厳格な権利の立証等をしなければなりません)は容易ではなく、実際上は第三者債務者(転売先)の協力もないと難しいのが現実です。また、第三債務者(転売先)から相手先に支払がなされたり、その代金債権自体が譲渡されたりしたらおしまいですのでスピードも要求されます。

  6. その他資産からの保全
    まずは、会社資産か、個人資産かにより分けられます。
    個人資産の場合は、前述の否認の対象とはなりませんが、会社資産の場合は「担保契約があるか・ないか」で大きな違いがあります。「担保契約がない」場合は、倒産直前の抜け駆け行為として否認の対象となる可能性が大きいです。
    「担保契約があった」場合でも、契約内容や締結の時期が問題となりますので、弁護士等の専門家と相談して、慎重に対応してください。

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2007年06月25日 03:54に投稿されたエントリーのページです。

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